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香合

形物香合相撲番付表

香合

香合(こうごう)は、風炉や炉の中で焚く「香」を入れる「盒子(合子:ごうす)」(小さな蓋付の器)です。
炭点前のときに普通は、炭斗(すみとり)に入れて席中に持ち出し、炭をついだ後、火箸で香合より香を取り、下火の近くと、胴炭のあたりに入れます。
炭点前がない場合は、床の間に紙釜敷(和紙を重ねて四つ折にしたもの)に載せて飾ります。
風炉には木地、塗物等の香合を使い、伽羅(きゃら)、沈香(じんこう)、白檀(びゃくだん)などの香木を使います。
炉には普通は陶磁器のものを使い、練香(ねりこう;香木の粉と蜂蜜などを練り上げた物)を使います。
古くは、「室礼(しつらい)」(座敷飾り)に香炉に付属して置かれ、大半は塗物でした。草庵の茶室でも香炉と一対で席中に持ち出し飾られましたが、炭道具として独立したかたちでの香合は、記録では文禄年間(1573〜1595)以降とされます。
漆器や陶磁器の小品から取り上げて使うようになり、また焼物香合を焼かせることも始まり、桃山時代から黄瀬戸、志野、備前、織部、信楽、伊賀、唐津などが焼かれます。もとは日用雑器から取り上げたものが多く、古い時代ではそれほど重く扱われていませんが、江戸時代後期、文化・文政年間になるころ、蓋置などとともに小物に趣向を凝らす事が盛んになり、唐物を中心に陶磁香合が重く扱われるようになり、安政二年(1855)に交趾・染付・呉州・青磁・祥瑞・宋胡録などの唐物香合を主に215種で編集した『形物香合相撲番付』が制作され、後世の評価にも影響しています。


『君臺觀左右帳記』に「香合は大小ともにをき物に成候へとも、さい々々の用にはちいさき香合可然候、これも手により、ゑやうにより上中下あるへく候、口一寸五分二寸の剔紅のゑやうのおもしろきは今も三四千疋可然候哉、歸花藥器これ又中央の卓にをかれ候はて不叶候、無爲の時は五千疋、今も三千疋可仕候、大茘支手の香合、花鳥なとほり候て藤の見なりの香合あるへし、これ又重寶に候、臺堆紅まれに候、つねに堆朱手のたいはおゝく候、金糸のくり々々の臺は重寶候へと無爲の時は千五百疋の物にて候、桂奬の臺も手のふかき波長蛟龍なとほり候は可然候、手あさきは常にあまた候。 剔紅(チツコウ) 色あかし、地に水、わちかへ、ひしなとを、いかにもこまかにほりて、その上に屋躰、人形、花鳥はかり、色々ほり候を云也。 堆紅(ツイコウ) 色あかし、地きうるし、ほりめに黒かさね一、又は二もあり、手ふかく、花鳥をほりたるを云也、花斗ほるもあり。 堆朱(ツイシユ) 色あかし、地きうるし、手あさくして、ほりめにくろきかさねなし、たゝあかくぬりあけたるを云也、但堆紅斗の堆朱、堆朱斗の堆紅と云事あり。 金糸 色あかし、地きうるし、ほりめふかく、ほりめにきと赤と、すち十すち斗かさなるを云也、一段と手ふかし。 九連糸(キウレンシ) 同前、手あさく、かさねすくなし。 黒金糸(コクキンシ) 色くろし、手いかにもふかく、赤とくろきかさね十すち斗あり。 堆漆(ツイシツ) 色あかし、金糸のことくして地まてほりとをさす、くり々々にあり。 紅花緑葉 これは花鳥をほる、花鳥をは赤く、枝葉をはあをくぬりあけてほる也。 桂奬(ケイシヤウ) 色くろし、地きうるし、ほりめにくれないのかさね一すち、又は二すちあり、花鳥くり々々色々あり、又地をくれなゐにぬりたるもあり、地くれなゐと云、又剔紅のことく地にあかく水、ひし、わちかへ、かうしなとほりて、上に屋躰、人形、花鳥なとほりたるけしやうあり、これは仔細あり、龍山と云。 犀皮(セイヒ) 色くろし、ほりめ、手あさく、ほりめひろく、かさねきとうすあかくあり、花鳥をはほらす、つねにくり々々におゝし、松のかわの色に似たり、松皮ともかく也。 堆烏(ツイウ) 色くろし、ほりやうは桂璋のことし、地まてほりとをさすして、地もくろし、くり々々におゝし。 存せい 色くろきもあり、あかきもあり、ちきんのことくほりたる物、也まれに候。 作は張成第一上也楊茂第二周明同」とあります。
『茶道筌蹄』に「香合 香合は道具中にて至極輕き物ゆへ、利休百會にも香合の書付なし、夫故名物も少なし、名物は堆朱貝に限る、張成、楊茂、周明、此三人宋人にて堆朱の三作と云ふ、張源、錢珍、呂甫、金甫、王圓、王賢、印堆、此七人は、元明間の人にて時代定めかたし、此七人と前三人とを合して、堆朱の十作と云ふ。存星 星のやうなる物あるゆへ存星と云ふ説もあり、存Cと書て人の名と云ふ説もあり、時代不分明也。堆K 唐物新古あり、十作の内にもあり。紅花緑葉 文字の通り十作の内にもあり。蒟漿 安南にてキンマを入る器なり、キンマの葉に梹榔子を包み、石灰を付て、食後に用る由、木地と籠地と二通りありて、此器に似よりのものをキンマと云ふ。ゴマ 高麗と云ふ事ならん、獨楽と云ふは非なり。貝 唐物琉球と二品あり。象牙 唐物、山中氏に紹鴎所持の寶珠形あり」「磁類。雲鶴 至て古し。角牛 至て少し、名高きは淀侯、出羽侯、山中氏に所持、角にて蓋の上に牛の浮模様あり、至て白き物にて、白呉洲ならんか。桔梗〈七官〉 木瓜〈七官〉 一葉〈七官〉 木葉形〈七官〉 元和慶長の頃、七官といへる唐人の持渡る手を七官と云ふ也、蜜柑、袋鼠、犬鷹桃、一種のもの、桃の上に犬と鷹と向ひ合す、開扇〈七官〉 木魚〈同〉 獅子〈同〉 角〈同〉 丸〈同〉。裏白 七官より時代わかし、南京磁とも云ふ」「染付類(古染付 蟲喰 新渡)。屏風箱 甲にかげひなたの桔梗あり、前後に筏乗りと野馬二匹とあり、横にすゝきの様なる物あり。張子牛 角甲に臥牛の染付横になり、ひら菱の様なる模様あり、牛向に左右あり。荘子 角隅に浮紋にて蝶一つあり、横織物もやう。水牛 葉入角、水中より牛半身出ずる上に月あり。繋牛 葉入角、杙に牛つなぎてあり。飛龍 葉入角、飛龍のもやうあり。引すて牛 あゆみ牛にて、綱長く引すてあり。柝木 甲も横も織もやうあり、まれに上に文字あり。龜 龜の形にて、頭少しのびてあり。桔梗 桔梗形、背高く、横に竪筋あり。兜巾 四方颪にして、茄子五つ、かげひなたの模様あり。結文 大小あり、小を玉章といふ、横織紋上に山水橋の上に碁うちあり、小は馬乗りありて結めなし、千家所持は大の方、随流の書付あり。鞠挟(ヤリハサヽ) 織紋もやう、夜郎蓋。辻堂 角四方、おろし屋根の上に松葉と木の葉とのもやうあり。菱牛 ひしなり、浮もやうの牛あり、火炎牛とも云ふ、横織もやう。菱馬 ひし形、甲に立馬あり、業平ひしのやうなるもやうあり。哵〃鳥 枯木に鳥のもやう。櫻牛 六角、甲に臥牛とちりさくら、横宝尽しあり、これは桜に非ず、桃ならん、放牛桃林の意ならん。橋杭 竹もやうもあり、織紋もあり。分銅 浮紋ありて、甲に小さき分銅あり。梔子 甲に梔子の花のやうなる物うきもんあり、横おりもやう。竪螺。横螺。二匹鯉。丁子。桃。扇(半開皆開)」「祥瑞(地名也、チアンスエンノ轉語也) 五郎太甫は伊勢の津の人、明末に祥瑞に渡り焼ものをなし、其後帰朝す、桂林漫録に詳か也、五良大甫呉祥瑞造、如此の文字あるは五郎太焼也、文字なきは只祥瑞焼也、遠州時代より古し、一説に呉しょんすいと云ふは唐人の名也、五郎太甫は模様をほりて藍を入たるものと云ふ。同瓢箪 丸の内に馬乗と鳥さしの繪あり、其外おりもやう。同竪瓜 織紋模様、りんぼ形の葉あり、やろう蓋。同横瓜 竪瓜同様の物にて、竪にうねあり、うねのなきを俗に枕と云う。同蜜柑 織紋、もやう上に葉のあるを善とす。琉璃雀 惣琉璃、羽少し出て、口の穴通る。同鶴 ひらき鶴の形、羽の間に詩のあるあり。同茄子。同橋杭 染付の橋ぐひ同様にて、よう入り、上につまみあり、なきもあり、りんず形織紋もやう書分け。同兜 下丸く、薄平たく、ふた兜の形に似たり、遠州輪違三つあり。同琉璃扇 扇の地紙、骨半分あり、地紋の上へ留りを懸けたるもの、青海波もやう。」「呉洲(地名)。松川菱 三がい菱にて、甲に人あり、横に漁樵、左右に竹。同周茂叔 葉入角、欄干あり、人物あり、水にチョボ々々としたるものあり、蓮に見立たるなり。同木瓜 松皮菱のもやうの通りにて、形もつかう。同菊蟹 菊の形にて、上に蟹のもやうあり、外は白し。同有馬筆 小角、前後は漁樵、左右は竹、上に至て小さき人形あり。同銀杏 木瓜ほどの大きさにてイチヤウの形也、惣のもやう。」「赤繪。古赤繪と云は至て古し、丸上につまみあり、横に筋ありて、萌黄にて葉のもやうあり、其外一定ならす。呉洲赤繪 定つてあるは葉入角、牡丹と兎とのもやうあり、葉萌黄、兎はもへぎなし、横宝尽し、又大中あり。」「紅毛(定りたるものなし)。」「交趾(安南と同國にて交趾は古名也、今は郡の名となる)。角牛 葉入角、惣もへぎ、葉黄にして牛少し浮あがる。同布袋 衣黒とび色、顔腹人はだ色。同狸 たうきの形にて、腹を抱て居る、紫黄もへぎの染分け、しりに少し黄。同鹿 紫身巌もへぎ、惣黄もあり。同大獅子 惣もへぎと白檀となり。同手遊獅子 大獅子より小なり、白檀黄もへぎ紫染分け。同大龜 甲に龜甲あり、紫黄もへぎそめ分け、形木彫のかめに同し。同錢龜 甲白檀、身もへぎと黄との両様、頭左へ見かへると眞すぐとあり。同笠牛 石の上に笠あり、牛黄、かさもへぎ、惣もへぎ、かさ紫もあり。同二匹龍 小判なりのうちに升降の龍あり、白檀もへぎ両様あり、又蓋黄もあり。同菊蟹 外もへぎ、蟹黄にて浮もやう。同石榴 丸にて甲にへたのやうなるものあり、筋三すぢありて其内に麒麟のやうなるもの鳳皇のやうなるものあるを金花鳥と云ふ、金花鳥にはへたなし、黄へきりの内、紫地もへぎ花黄、又黄雲のすぢ地もへぎ花黄。同烏帽子鳥 鴨の形にて大ぶり、形ゑぼしに似たり、もへぎ、羽白檀。同靈芝鳥 靈芝くはへている鳥也、靈芝白檀黄。同黄鳥 黄なる鳥なり、羽白檀。同音呼。大小かも 惣もへぎ、白檀と黄と交るもあり。同長角 葉入、上に梅に鳥あり、惣もへぎあり、へきりの内紫、白檀になりたるもあり。同やR壽 何れもも丸く此文字あり、惣もへぎ、文字のところ黄になりだるもあり。白高麗(形不定)。」「和物類。瀬戸 利休所持雀あり、のんかうより寫しあり、所在たしかならず・黄瀬戸 根太、利休所持、一翁宗守傳来、今出羽侯にあり、焼餅、平丸、菊の押形あり。志野(形不定)。唐津(形不定)。織部(形不定)。萩(形不定)。信樂(形不定)。備前(形不定)。」「楽焼類。伯藏主 光悦手造を、原叟、左入に命して寫させ、箱書付をなす。蛤 宗全このみ、金ために白菊。鳥の子 宗全手造、宗乾書付のうつしあり。舟引 左入作、如心齋このみ、赤。木魚 如心齋このみ、赤。總 如心齋このみ、赤にて甲にすヽきの穂のもやうあり。鯉 如心齋このみ、手遊の金魚のやうにて、背中あかく丸し。柏樂 如心齋このみ、たんはんとあかと両様あり、江岑このみの通なるを、蓋身横に分る。手造 手造は光悦より始る、光悦薬はのんかう藥と自分と両様あり、千家にては江岑より始る。」「蒔繪。聖武時代は奈良の都也。保元時代は崇コ院御時代。鎌倉時代は頼朝時代。尼将軍の十二手箱と云ふものあり、丸形大二の小二つ、長角二つ、角二つ、鏡の巣大二つ小二つ、合せて十二品、當時世上に出たるは吹れ楓にませがきに菊也。東山時代は義政将軍時代。信長公時代。太閤時代。聖武時代より太閤時代までは皆蒔繪もの也。」「白粉解。元来は婦人の手道具をかり用るものなり。紹鴎形白粉解 黒ぬり胴合せ、千家所持五郎作、江岑書付あり、當時白山氏所持。利休形白粉解 利休このみ、盛阿彌作、黒ぬり、金粉にて劍梅鉢の大小七つあり。道安白粉解 春慶、あげ底、盛阿彌作、千家所持、天然のうつし數百あり。少菴白粉解 盛阿彌作、黒に金粉にてかげの菊、甲に三つ合口とそことに七つあり。こぼれ梅白粉解 紹鴎時代よりありて、このみしれずといへとも、利休判あるが山中氏所持、それゆへ千家書付出来るなり。挂羅 江岑このみ、裏金梨子地、外黒、金粉にて梅月のもやうあり。狛樂 江岑好、内黒、外溜、江岑書付に利休紋とあり。三日月 元伯このみ、黒眞ぬり、胴金。橙 東v蜑@様御好、内黒、外溜、又内黒外金溜あり。根来 信長公時代までの品也、其後新作なし。鎌倉 頼朝時代也、奈良にて寫したるを大佛前と云ふ此處にて似寄の物を製する故か。」「一閑張物。兜巾 元伯このみ、千家傳来、當時山中善五郎所持、又啐啄齋寫し三十あり。烏帽子箱 元伯このみ、本歌八文字屋荘右エ門所持、京絲屋町住。梅鉢白粉解 原叟このみ、本歌竹浪菴所持。不倒翁 原叟このみ、外ため内黒、久田宗也病氣全快の祝に、原叟このみ遣はされし品也、起あがると云ふ心也、當時山中善作所持。桃 元伯このみ、内外黒、模様なし、大コ寺聚光院の什物、仙叟書付あり、大ぶりなり、但し内朱甲に花と金粉にてあるは元祖一閑作にて、このみしれず、啐啄齋書付あるは、廣岡五兵衛所持。三日月 小方、内朱外黒、元伯このみ、本歌今日菴にあり、さん蓋、内外黒は宗全このみ、千家所持内朱外黒胴金は原叟このみ、宗全好の品にすヽきを書たるは啐啄齋、江戸土産武蔵野と云ふ。結文、洲濱、瓢箪、梅鉢、蔦、何れも内朱外黒、原叟このみ、十づヽ五品合せて五十になる、それゆへ五十の内と云ふ。挂羅 原叟このみといへとも不分明。」「木地物。鴛鴦 妙喜菴松木を以て製す、左近作、原叟このみ老松割蓋と同木なり、原叟書付數三十七、又別に殘木にて天然うつし十三あり、合せて五十となる、千家に鎌倉雕あり其寫し也。龜 交趾大龜のうつしなり、如心齋このみ、木地松木、天然書付ある處は數五つと云ふ。獅子 千家所持、唐物、飛来一平よりうつし来る、此一平は天然の若黨也。桐 了〃齋このみ、亂桐と云ふ、久田宗全かへ紋のうつしなり、松の木地。ぶりぶり 原叟このみ、一燈宗室へ好みつかはす。玉 原叟このみ、如心齋へ好みつかはす。竹 如心齋このみ、根節にて造る、實は紀州四代目大恵院様の御好也。櫻木 江岑このみ、櫻の木地、平丸形、胴金。」とあります。

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