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煙草盆

手付煙草盆 手無煙草盆 火入 灰吹 煙草入 煙管 香箸

煙草盆

煙草盆(たばこぼん)は、火入(ひいれ)、灰吹(はいふき)、煙草入(たばこいれ)、煙管(きせる)、香箸(こうばし)など、喫煙具一式を納めておく道具です。
煙草盆は、「莨盆」とも書き、煙草盆、火入、灰吹、煙草入、煙管一対を、煙草盆一式あるいは煙草盆一揃などといいます。
煙草盆は、茶事においては、寄付、腰掛、席中では薄茶が始まる前に持ち出されます。濃茶席と懐石中には出しません。また大寄せの茶会では、最初から正客の席に置かれます。
煙草盆に必ず備えられるのが、火入、灰吹で、千家では向って左に火入、右に灰吹を入れます。煙草入と煙管は一組で用いられ、用いる時は正式には煙管二本を煙草盆の前へ縁に渡して掛けます。武者小路千家では、その他に、灰吹の右に香火箸(香箸)を添えます。
煙草盆に、表千家では敷き紙をしますが、裏千家では敷きません。武者小路千家では火入の下にだけに敷きます。
煙草盆は、最初は、香盆を見立てたもので、香炉を火入に、炷殻入を灰吹、香合を煙草入とし、盆の前に煙管を二本置くのは、香箸に見立てたものといいます。
煙草盆は、利休の時代には茶席では使われておらず、江戸時代に入り宗旦・遠州・宗和あたりから好み物の煙草盆が登場し、江戸後期に莨盆一具が茶事の道具として一般的になったといいます。
煙草盆は、形はさまざまで、大別して手付と手無に分けられます。
煙草盆は、唐物には蒟醤・青貝・漆器・藤組など、和物には唐木・漆器・木地・一閑張・篭などがあります。
煙草盆は、大名好みのものは、飾り金具、塗蒔絵、透し彫り、唐木彫りなどの等手の込んだ細工物が多いのに対し、茶人好みは桐や桑等の木地で形も簡単なものがほとんどです。

『茶道筌蹄』の煙草盆の部、「塗物類」に「鯨手 如心斎好、真黒ぬり」「こり蓋 原叟このみ、縁溜ぬり、底鏡黒ぬり」「絲巻 如心斎このみ、真黒ぬり、絲巻のすかし爪紅」「三つ入 元伯好、桐木地、黒掻合せ」「舟形 宗全このみ、こり蓋の深き形、真黒塗」、「木地類」に「くじら手 如心斎好、桑木地」「つぶ足 如心斎このみ、桑木地」「半庵好 葉入角、桑手も共木にて唐草すかし」「行李蓋 原叟このみ、真ぬりの通りにて桑きじ」「覚々斎好 中段にとまりあり、げす板に火入灰吹切こみ、下へ煙草入をいれる、桑きじ」「絲巻 如心斎このみ、しんぬりの通りにて桑」、「一閑類」に「木瓜 元伯好、一かん張、手付」「釣瓶 元伯このみ、大小あり、今用るは大の方」「行李蓋 原叟このみ、しんぬりの通りにて一かん張」「三つ入 一閑張、手なきは元伯このみ、竹の折手あるは宗全このみ」「つぶ足 如心斎このみ、一閑張」とあります。
『茶式湖月抄』に、「たばこ盆の事は、利休時代まで、稀々に用いしゆえ、莨盆一具などなかりし也。やうやう九十年来、世人なべて用ることとなれり。利休煙草盆あり、これは利休の名をかりたるなるべし。」とあります。
『目ざまし草』に、「芬盤といふものは(ある説に、志野家の人、某の侯と謀て、香具をとりあはせたりといへり)、香具を取りあはせて用ひしとなり。盆は即ち香盆、火入は香炉、唾壷は炷燼壷、煙包は銀葉匣、盆の前に煙管を二本おくは、香箸のかはりなりとぞ。後々に至り、今の書院たばこ盆といふ様の物出来ると也。」とあります。
『翁草』に「寛文の頃迄有し古老の云く、多波粉の渡りしは近き事なり、南蛮人我朝に来て呑初めたり、其の時は小蝋燭を燈して呑たり、去に仍て、日本人も小蝋燭にて呑み、夫より間も無く、世界にはやりもて長ずる事に成れり、其の時分、世にこせ瘡と云物はやりしに、多波古を呑む人は、此煩ひ無しと、云ひはやらせて、世にはやり広まりしなり、しかれ共、今の如く煙草の道具はなし、竹きせるとて、細き竹の節を込め、漸く火皿程に切り、筆の軸程成る物を、夫へ横に付て呑しなり、夫さへ持たる人稀なり、下々杯は、直に煙草の葉を、くるくると巻き、呑口に紙を巻き、火を付て呑たり、大身の大名の煙草飲んと有時、近習小姓片手にはつるの付たる火入に火を入れ、脇に小石を置、片手には唐草の二尺四方程なるを四つに折持来り、主人の前に置、革の内にはきせる煙草あり、其の革の上に火入れを置て、たは粉をつぎ、指出し飲給て後、石にて灰を落し、右の革を元の如くに仕たまふ、大名さへ如此況や、下々に於て、今の様に多葉粉盆などゝ云事一切なし」とあります。

     
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