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落掛釘
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落掛釘(おとしがけくぎ)とは、床の間の落し掛けの中央正面あるいは裏側に、釣花入を掛けるために打つ折釘のことです。
落掛釘は、千利休は落掛けの内側に、元伯宗旦は落掛けの外側に打ったといいます。
落掛釘は、「華鬘釘」(けまんくぎ)ともいいます。
華鬘(けまん)は、花鬘、花縵とも書き、梵語の「kusuma-málá」(クスマ・マーラー)の漢訳で、倶蘇摩摩羅と音写され、花輪を意味します。仏殿内陣の長押や梁などに釣環で掛けられる荘厳具で、円形または楕円形の金・銅・革などに唐草や蓮華を透かし彫りにして下縁に総状の金物や鈴を垂らしたもので、起源は古代インドにおいて貴人に捧げられた生花で作られた花輪で首にかけたものといい、のちに供養物として仏前に供えられるようになり、中国や日本に入って仏具となったといいます。
『利休相伝之書』に「釣舟の花入は床のおとしかけの内の真中に釣也、昔は出舟入舟とて口伝有たれとも、灯台は舟のへさきを上座に成して釣也」とあります。
『細川茶湯之書』に「つり舟は、床のおとしかけの内に、折釘をうちてかくる也、真中也」とあります。
『石州三百ヶ條』に「船の花入懸候事 船を懸候高さは、向の壁の花入懸候釘の高さに船の底当るほとに釣なり、尤、花により少の高下は有なり、山吹、藤なと盛花は少上てよし、椿なとの類は少下けても釣る也、昔は床の天井の真中にひるかぎを打也、かきの先を前へする也、宗屋居士よりおとし懸の左右は真中に打なり、花の枝出張、座中せはき時は床の内に釣てよし、客も小勢、花もつかへぬ時は、おとし懸もよし、昔は出船、入船の説有、宗易居士より是を不用、朝晩共に花の、客に向ひ候様に入る也、宗屋は舟にくさり、へさきと、ともとの差別有故、あしきとてくさりを後先より一筋にて用ひられ候、是織部の船也」とあります。
『茶話指月集』に「また休が衝上の障子をかけはずしにして不自由なるを、さる人見て、上に溝をほりてひきあけ給へといへば、いやさやうに操ることわれは好ずといふ、又、床に掛くる釣舟の折釘もおとしかけの外に打なり、内につりて、いづくより下たるにやとみゆるは、是もあやつりてあししといふ、聞く人甘心するなり」とあります。
『茶道旧聞録』に「床に釣る舟花入の釘、利休は床の落し掛の外に打ちて、釘見せるなり、古織は落し掛の内に打ちて、釘を見せざるなり、利休はこれを繰りたるやうにて悪しと云はれしとなり」とあります。
『茶道筌蹄』に「花入釘 柱へ打は平座、壁へ打は丸座、落懸は内は利休、外は元伯、隅のぬり出し柱の釘は元伯、此くぎを柳くぎと云はあしヽ、花くぎと云へし。床の吹ぬぎの木、客より見付にはるは内のしんにクギをうち、太鼓舟をかける、これは釘も花入も仙叟好なり、台目床のくぎは大抵床より三尺三寸、柱にうつ釘は落しかけより一尺一寸下けて打つ、敷こみ床はとこ縁だけ上てうつなり、大床はこの割なり、大抵壁くぎは畳おこしよりひきヽはなし」とあります。
『南方録』に「休に大つり舟、小つり舟あり、いづれも床の天井真中に小びるを打てつらるゝ。宗無も小つり舟所持、休と同前。紹林名物の小舟所持。これは床のをとしがけ内の方に釘打てつらるゝ。休に尋申たれば、古来定法なし。めいめい分別次第のことなれども、をとしがけにつりては、小座舗花むかづきて然るべからず、床ぶちの上に当て、つりもの危うき心もあり。床はいつも大小ともに真中につるなりと云々。感状のことなり。」とあります。
『茶式湖月抄』に「釣舟の小蛭 床の天井の真中に打、をとしがけに打ては小座敷花むかへきて然るべからず、床ぶちの上にあてヽつりもの危きこヽろもあり、利休のとき田辺屋紹林は落がけの内の方に釘打といへり、宗無は休と同しく、但し、板床には釣舟無用なり」とあります。
『源流茶話』に「紹鴎か頃まては、床の天井の真中に、蛭鉤を打て、夫より鎖を掛て舟をつりしか、利休は床のおとしかけの真中、内の方に折釘を打て、夫に鎖りを掛けたりしを、何方よりさかりしやらんと見するは、面白からぬとて、近代は外の方に折釘を打つ事になりしか、舟を釣らぬ時は、目に掛るとて、今も内に打つ方も有りとなり」とあります。
『注維摩詰經』に「華鬘者既為首飾。而束髮使不亂也」とあります。
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