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文人表具

真(表補) 行(幢補) 草(輪補) 大和表具 変り表具 文人表具 名所

文人表具
文人表具(ぶんじんひょうぐ)とは、日本で行われている掛物の二大様式の一として、宋の表具式を基に日本化した広義の大和表具という言葉に対するものとして、主に江戸時代に伝えられた明末清初の表具式を踏襲した表具の形式などを総称して用いられる言葉です。
文人表具は、文人仕立とか唐表具、支那表具と呼ばれ、江戸時代初期に明末清初の中国から招聘された隠元禅師が多くの門人、文人を伴って来朝し、当時の中国文化を伝えたことにより、中国趣味や文人趣味が全国に流行し、舶載された明や清の書画に倣った文人趣味の書画を表具したところからこの名があります。
文人表具は、基本的には本紙の周りをぐるりと同じ裂地で取り巻く総地(そうじ)で、その両端を「明朝」(みんちょう)と呼ばれる三分程の別の裂地で縁取りしたもので、縁を二重に廻したり二段にすることがないので丸表具とか袋表具とも呼ばれます。
文人表具は、一文字を付けるものと付けないものがあり、筋を付けるものと付けないものがあります。
文人表具は、南画や文人画、漢詩文、篆書(てんしょ)や隷書(れいしょ)などの書に用いられ、煎茶席によく掛けられます。
文人表具は、袋表具(ふくろひょうぐ)、本袋表具(ほんふくろひょうぐ)、丸表具(まるひょうぐ)、明朝表具(みんちょうひょうぐ)、太明朝表具(ふとみんちょうひょうぐ)、唐表具(とうひょうぐ)などの名称が行われています。

袋表具
● 袋表具(ふくろひょうぐ)
袋表具とは、本紙の周りをぐるりと同じ裂地で取り巻く総地(そうじ)で、本紙を廻る中廻(ちゅうまわし)のない形式のものがそう呼ばれています。
袋表具は、一文字を入れたものや本紙廻りに筋を入れたものもあり、一般的には風帯はつけませんが、風帯をつけたものや中廻を一文字と平行に入れた「見切」(みきり)を袋表具と呼んだものもあります。
● 本袋表具(ほんふくろひょうぐ)
本袋表具とは、風帯と中廻がなく、本紙の周りをぐるりと同じ裂地で取り巻く総地(そうじ)で、一文字を入れた形式のものです。本紙廻りに筋を入れた形式のものもあります。
● 丸表具(まるひょうぐ)
丸表具とは、袋表具のうち風帯が付かないで一文字が付いた形式のもので、切仕立(きりしたて)ともいわれます。
● 明朝表具(みんちょうひょうぐ)
明朝表具は、明朝仕立、袋明朝ともいわれ、掛軸の左右端に三分前後の縁(明朝)を付けたものです。中国明代の表具式に倣ったことからこの名があるといいます。柱の端に筋を通して、同質の裂地を明朝にしたものを筋明朝とか筋分明朝と呼んでいます。明朝の代わりに薬袋紙で覆輪をしたものも明朝表具と呼ぶことがあります。
●太明朝表具(ふとみんちょうひょうぐ)
太明朝表具は、左右の柱が天地を貫き通したもので、天地と左右の柱が同色の時は境に細金を入れます。細物を仕立てたときは聯仕立てともいいます。
●唐表具(とうひょうぐ)
唐表具は、天・中・一文字・風帯を同一色にして、その境に筋を入れたものです。筋を多用するところから細金表具(ほそかねひょうぐ)ともいいます。また、一文字のみ金襴を用いたものもあり、明朝を併用することもあります。

『嬉遊笑覧』に「風帯 今唐表具といふものには風帯なし、典籍便覧に今画軸上二紙飄者曰払燕恐燕集墮塵于其間、調言長語に画上二紙條名曰驚燕云々古不粘任其瓢動とあれば後に褾(へり)の表に粘着(のりつ)けたるをやがてそれもせぬことゝなりしにや」とあります。
『随流斎延紙ノ書』に「表具唐にも有事なり、上下を脇へ廻したるを唐表具と世間申ならわすなり」とあります。

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