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釜形

芦屋浜松文真形釜 東京国立博物館蔵

釜形(かまがた)とは、茶の湯釜の形状のことをいいます。
茶湯釜の形状は千差万別で、その名称のつけ方は、形によるもの、口造り、肩、甑、鐶付、羽などの形状によるもの、文様によるもの、所有や所在、伝来によるものなどがあります。

■ 形状による名称
真形(しんなり)、切合(きりあわせ)、箆被(のかつき)、尻張(しりはり)、 乙御前(おとごぜ)、布団(ふとん)、 広口(ひろくち)、皆口(みなくち)、 姥口(うばくち)、十王口(じゅうおうくち)、繰口(くりくち)、 田口(たぐち)、四方口(よほうぐち)、 矢筈(やはず)、一文字(いちもんじ)、肩衝(かたつき)、撫肩(なでがた)、 面取(めんとり)、(かさ)、達磨(だつま)、荷葉(かよう)、(かぶと)、 (まる)、日の丸(ひのまる)、(かく)、三角(さんかく)、 四方(よほう)、(ます)、八角(はっかく)、十文字(じゅうもんじ) 切子(きりこ)、責紐(せめひも)、常張(じょうはり)、塩屋(しおや)、(しおや)、唐犬(とうけん)、 (つつ)、鶴首(つるくび)、富士(ふじ)、九輪(くりん)、からげ(からげ)、 瓢箪(ひょうたん)、立鼓(りゅうご)、重餅(かさねもち)、車軸(しゃじく)、 平蜘蛛(ひらぐも)、(ひら)、透木(すきぎ)、裏鏊(うらごう)、 茶飯(ちゃめし)、(なべ)、手取(てどり)、香炉(こうろ)、 尾垂(おだれ)、のんどり、など。

■ 文様による名称
(あられ)、擂座(るいざ)、(すじ)、糸目(いとめ) 、 雲龍(うんりゅう)、(ともえ)、政所(まんどころ)、万字(まんじ)、 千鳥(ちどり)、竹生島(ちくぶしま)、春日野(かすがの)、春日山(かすがやま)、 桜川(さくらがわ)、高砂(たかさご)、 十徳(じゅっとく)、百侘(ひゃくだ)、雷声(らいせい)、大講堂(だいこうどう)、 八景(はっけい)、算木(さんぎ)、色紙(しきし)など。

■ 所持者、所在地、伝来等による名称
百会(ひゃっかい)、園城寺(おんじょうじ)、地蔵堂(じぞうどう)、東陽坊(とうようぼう)、 阿弥陀堂(あみだどう)、達磨堂(だるまどう)、安楽庵(あんらくあん)、 国師(こくし)、針屋(はりや)、油屋(あぶらや)、野溝(のみぞ)、 万代屋(もずや)、尾上(おのえ)、望月(もちづき)、残月(ざんげつ)など。

『茶具備討集』に「釜 鼎 鑵子 ○真(シンノ)釜 ○肩衝(カタツキ)釜 ○円(マル)釜 ○茶磨(チヤウス)釜 ○甑(コシキ)釜 ○二重釜 ○冨士形(フジナリ) ○覆籠(フセゴ)釜 ○婆口(ウバクチ) ○折葉(ヲリハ) ○几帳面(キテウメン)当字 ○撫葉(ナデハ) ○箆豢(ノカツギ)無葉也 ○平釜 ○茶屋(チヤヤ)釜 ○靠(カウノ)釜 ○鶴(ツル)頭釜 ○極古(ゴクフルキ)釜 ○新(アラ)釜 ○鋳膚(イハダ) ○鋳懸(イカケ) ○朽目(クチメ) ○荒膚(アレハダ) ○霰(アラレ) ○梨膚(ナシハダ) ○撫膚(ナデハダ) ○銕斑(カナマタラ) ○銕色(カナイロ) ○音曲 ○銕気(カナケ) ○釣物(ツリモノ) ○蒲団形(フトンナリ) ○柚押形(ユベシナリ) ○葉落(ハヲチ) ○蟇目形(ヒキメナリ) ○手取(テトリ)土瓶也必有口 ○諍強(セウコハ) ○諍張(ゼウハリ)当世数寄者所云有弦無口也」とあります。
『茶道筌蹄』の「カマ形」に「真形 シコロ羽かたのつかぬを鶴首真形といふ、蘆屋天猫に多し、其後はこの写しなり、古作ゆへ好しれす、底にかへしと云てほそき輪あり」「透木 庸軒このみのアラレの外イロリ透木カマ古作はこのみなし、原叟このみに乙御前あり」「鶴首 名物鶴首は八寸、利休形はこれより少し小なり、鶴首風呂は名物の方をかけるためなるがゆへゆ利休形のカマには少し大ぶりなり、利休鶴首は石メ蓋、真鍮平鐶、両方共ケキリなり」「小霰 紹鴎所持の写しならん、茄子の鐶付、くちなしツマミ、煙かへしあり」「乙御前 信長公御所持、当時加賀公御所持、信長公より其臣柴田へ下さる、其時の狂歌に、朝夕になれしなしみの姥口を、人に吸せんことおしぞ思ふ。このカマの写しは加賀侯御所持故寒雉をよしとす、天猫に輪口あれとも姥口をよしとす」「百会 利休百会に用ゆ、天猫作、ウバ口、鬼面鐶付、唐金薄モリ蓋、当時柳沢侯御所持」「鉈 百会に似て肩に張ありてナダメあるゆへナタカマといふ、天猫作、利休所持、当時は加賀侯にあり、故に寒雉をよしとす」「大講堂 作しれす、叡山大講堂の香炉をカマに用たるものなり、大講堂の文字右より書たるもあり、左より横に書たるもあり、本歌御物なりしが明暦の火に焼失したるゆへ分明ならす、広口、トモ蓋、常張」「唐犬 宗旦所持、天猫作とも、蓋三ミセン耳なるゆへ見立てヽ唐犬カマといふ、伊勢神戸侯御所持」「鍼屋 アシヤ作 鍼屋宗春所持、コシキの内に雷紋あり、鐶付遠山」「萬字 天メウ作、雷紋と卍字と交りしを大徳寺形といふ、萬字ばかりあるは遠州公、表具師中屋宗言所持のうつしなり」「野溝 天メウ作、広口、枯木に猿猴の模様、鐶付玉章、唐金蓋、野溝某所所持故名く」「地蔵堂 透木釜、羽少し上へ反る、輪口、鐶付鬼面、唐金蓋、無地、尾州地蔵堂の常住釜にて天メウ作なり、小田原陣の時利休とり出し小田原風炉へとり合すとぞ」「東陽房 天メウ作、筒カマ、鬼面、鉄のカケゴ蓋、アゲ底、ケキリ真鍮丸鐶、利休所持を真如堂東陽房へ贈りしゆへ名く」「布団 利休所持,与二郎作、輪口、鬼面、唐金蓋、伊予西條侯御所持、平丸とも云ふ」「切合 台子風炉が始にて其余色々あり」「広 古作に多し、道安好、与二郎作にて輪口とウバクチとあり」「皆口 天メウよりあり、好なし」「ウバ口 口作り老女のくちに似たるゆへ云ふ」「十王口 輪口の上の少し開くを云ふ、十王の冠の形に似たるゆへ名く」「丸カマ 利休形、与二郎作、輪口、唐金蓋、鬼面鐶付」「張尻 右同断、与二郎作、一名泥障金と云ふ」「阿弥陀堂 利休このカマの大の方を有馬阿弥陀房へつかはす、丸釜、シリ張、阿弥陀堂の三品大中小あれども大小をよしとす」「原叟好アミダ同 小阿弥陀堂に千家所持布団カマの蓋を兼用するなり、浄味作」「国師 春屋国師所持、与二郎作、当時山中氏所持、国師丸とも云ふ」「日の丸 与二郎作、三井元之助所持」「四方 クリ口、鬼面、真チウ平鐶、箆カツギ少し切カケ、大は少庵このみ、小は元伯このみ、トモ蓋、シヒツマミ、当時写し、大は石目蓋なり、古作はトモ蓋と唐金、石目、花の実、鋳ぬきツマミもあり又唐金蓋もあり」「萬代屋 天メウ作、萬代屋宗安所持、形一様ならすと云とも広口、鬼面、輪口、肩に筋あり、累座のあるとなきとあり」「雲龍 利休好、与二郎作、地紋雲龍カケゴ、蓋トモ蓋、大は蓋糸目ありキリコツマミ、小はカキタテ、ツマミ鐶付鬼面、少庵好は鬼の鐶付にて大ばかり小はなし、何れも真チウマル鐶、原叟このみは小にて少しスソの方張るなり、織部好は中にて龍に角なし、何れもアゲゾコ」「龍カマ 与二郎作、鐶付龍に似たり、マルカマのすこし高き方なり」「升釜 利休形、四方カマの肩が落ずに、羽落ち箆カツギにならざるなり、大小あり」「巴蓋 少庵所持、霰平カマ、切カケ、鐶付鬼面、天猫作、蓋は少庵好、巴の地紋あり、山中氏所持」「土斎 宗旦このみ、土斎へ好つかはすなり、元来天猫作、ソコ九兵衛作、唐金モリ蓋、柳沢侯御所持」「四方口 元伯このみ、元来天猫作、ソコオダレになほす、鬼面、トモ蓋、元伯より探幽へ伝ふ、浄味写しにはナタメ鐶付あり、千家は鬼面を用ゆ」「裏鏊 元伯好、元来天猫作の鏊の底の見事なるを打かへしたるなり、夫故ソコに四つの鐶付あり」「累座 元伯このみ、元来天メウ作の大カマを老人のために底を切あげたるなり、クリ口、累座、鬼面、唐金蓋、山中氏所持、俗に座阿弥陀堂と云ふ」「立鼓 元伯好、瓢箪を引くりかはしたる様の形なり」「腰萬字 原叟好、丸釜、切かけ、こしに卍字有て覚々斎の字あり、鬼面鐶付、鉄の鬼面風呂に添ふ、浄味作」「田口 原叟好、琉球風炉へ好む、浄味作、大津両彦所持」「百陀 原叟このみ、板風炉にこのむ、鏊取手、口に雷紋、唐金蓋、百陀の文字あり、道爺作」「達磨堂 原叟高桐院清厳和尚建立の達磨堂の香炉を以てカマとなす、形ナデ四方、カタに玉ブチあり、オダレ、香炉耳、トモ蓋、清厳和尚の書達磨堂の文字あり、写し道爺作数三十」「角カマ 原叟このみ、至て大ぶりカタに玉ブチあり、刷毛メ、クリ口、トモ蓋、常張鐶、オダレ、前に覚々斎の文字あり、江戸大西五兵衛作」「富士 如心斎好、道爺作、鬼面、羽釜、口に累座あり、鐶付の上に筋あり、鳳皇風炉に合す」「雷声 如心斎好、浄元作、広口、唐金蓋、鬼面鐶付、如心斎書にて雷声の二字あり、後藤玄乗へ好み遣す、大葭のカマ置添ふ、啐啄斎風炉の時此カマ拝見致し置度よし後藤に申遣す、玄乗雲龍風炉に小雲龍のカマをかけ、後座に葭のカマ置を敷き此カマに杜若を生る」「ダツマ 佐兵衛啐啄斎所持の蘆屋作、鯉の地紋のカマによりて好む」「刷毛目姥口 了々斎好、二代目佐兵衛作、鬼面鐶付、唐金一文字蓋、ツマミ梔子」とあります。

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